「そっかぁ……よかった」
思わずタメ口になるくらい、安心した様子の彼女。
なんて無邪気なんだろう。
なんて健全なんだろう。
那智は、こんな子に想われているんだ。
「……相賀さん」
「はい?」
「那智が裏門にいるから、悪いけど伝言伝えてもらえるかな?“あたしは友達と遊んで帰る”って」
……どうして、あんなこと言ってしまったんだろう。
いそいそと裏門に向かう彼女の背中を見つめながら、あたしはすでに後悔していた。
あたしが逃げたことを知ったら、きっと那智は怒るよね。
怒って
あたしに詰め寄って
強引にキスをして
奪って――…
最低だ、あたし。
那智から逃げだしたい気持ちとは裏腹に
どこかでまだ、強く求められたいと願っている。