いったいこの子は、どんな答えを望んでいるんだろう。

那智に恋していることを隠す気なんか、微塵もない態度で。


普通に恋して

普通に嫉妬して

普通に追い求めて


そんな彼女があたしには羨ましくて、うっとうしい。



「……相賀さんが心配してるようなことは、何もないよ」


「え?」


「那智は気分屋だから、頼まれて描くのが苦手なの。だからその言い訳にあたしの名前を使っただけだと思う」



彼女は納得するべきか判断しかねた表情で、あたしを見つめた。



「じゃあ、藍さんは那智くんを、弟として見ているってことですか?」


「……うん。そうだよ」



彼女に向けたはずの言葉は、思いのほか自分の胸を深くえぐった。