「前から一度、藍さんとお話したいと思っていたんです」



そう言って遠慮がちに微笑む彼女。


こうして改めて見ると、いかにもモテそうな子だと思った。


華奢で小さな体。

無造作にはねる柔らかそうな癖毛。

ほんのりピンク色の頬は、きっと触り心地がいいだろう。



「……話って?」


「那智くんのことで」



予想できた返事なのに、心臓が大きく鳴る。



「ふたりは姉弟になるはずの関係だったんですよね?」


「なんでそんなこと聞くの?」



彼女は数秒黙りこみ、小さく「那智くんが」と口を開いた。



「あたしにハッキリ言ったんです。“俺は藍しか描かない”って」



那智……。



「本当の姉弟でもないのに、そこまで特別に想うことって、普通はないんじゃないですか?」