――『藍ちゃん。梅ジュース作ったから、飲む?』
どうして。
どうして今、思い出すのは
やさしい笑顔なんだろう。
最後におばさんが作ってくれた梅ジュース。
あたしは「いらない」と言って、床にぶちまけてしまったんだ。
グラスが割れて、残骸が散らばっていた。
あんなこと、するつもりじゃなかったのに――。
そのとき、いきなり家の中が真っ暗になった。
「えっ? 停電?」
「ブレーカー落ちよった」
那智の舌打ちが暗闇に響く。
「あたし、懐中電灯持ってくるね」
「俺がすぐ直すから、いらん」
「ううん。待ってて」