――勝手に触んなや。


それが最初に聞いた、那智の声だった。


忘れもしない。

あのときの衝撃。

鳥肌がたつような、快感にも似た戦慄を。




出逢った場所は山の中。

中腹に建つ白い灯台に行ってみたくて、山道を登っていたあたし。


が、なかなか到着できずに疲れ果て、石畳の山道にドカッと座りこんだ。



『疲れたぁ……』



汗をふいて、ふと流した視線の先。

白くて四角いものが落ちているのに気づいた。


スケッチブック? そう思い、無意識に手を伸ばした、

そのときだった。




『勝手に触んなや』




声は、真上から響いた。