「やーもうっ!」
「はははっ」
あたしの反応を面白がって、さらにイタズラしてくる那智。
なんか……この感じ、久しぶりだ。
あたしが怒れば、那智が笑う。
那智が笑うから、あたしもだんだん、笑ってしまう。
「……もう」
唇をとがらせると、那智は勝ち誇った笑顔でポンポンと頭を叩いた。
外に出ると日が暮れかけていた。
ぐっすり眠ったおかげで体が軽い。
心も少し軽くなって、久しぶりに自然に笑えている。
那智のおかげだね。
……ありがとう。
こうやって少しずつ、あたしたちは元に戻っていける?
いつかは、お父さんやおばさんのことを思い出さずにすむようになって……。
「――藍ちゃん?」
声をかけられ、あたしは足を止めた。