「してるよ。でも、たまには息抜きも必要じゃん」
「じゃあ……今日は出かけるか」
「え?」
「その息抜きとやらに」
夏休み最終日の繁華街は、私服姿の中高生であふれ返っていた。
久しぶりの外出なのに、あたしは人の波に酔って気分が悪くなった。
楽しそうな周囲の中、自分がひどく浮いている気がした。
「大丈夫か?」
「うん……」
たぶんまともに寝てないせいだ。
すぐに体が疲れる。
那智はさりげなく気遣ってくれたのか、映画を観ようと提案した。
何が観たいか考えるあたしの目に、ふと、あるチラシが入った。
「那智。あたし、映画よりもあっちがいい……」