あたしたちは、今もそれぞれの部屋に分かれて暮らしている。
どんなに寂しくても、もう同じ部屋で眠ったりはしない。
夜中に何度も目を覚ましてしまう自分を、那智には知られたくないから。
住み慣れた古いアパート。
見なれた窓からの町並み。
カッターで切った右手の傷は跡形もなく治り
何事もなかったかのように
時間が流れる。
「もうすぐ2学期か。早いな」
なんとなくつぶやくと、
「受験生のセリフとは思われへんな」
と那智が笑った。
受験……。自分のことなのにピンとこない。
できれば高校には行かず働きたいな……。
そんなあたしを見透かしたように、那智は
「ちゃんと勉強しろよ」
とえらそうに言った。