……もしも。
もしもお父さんが、本当のことを早く教えてくれていたら。
那智と姉弟になる運命を、もっと早く知っていれば。
あたしは惹かれずにすんだのだろうか。
この熱い衝動を。
荒ぶるような欲望を。
抱えずにすんだのだろうか――…
『暑っつー……』
神木家のリビングで、おばさん特製の梅ジュースとやらを飲み終えたあたしは
午後からひとりで島内をブラブラすることにした。
星名島は、紺碧の海にふちどられた小さな孤島。
海の青、空の青、山の緑。
照りつける陽射しまでもが色つきに見える、不思議な島。
その豊かな自然の中で
出逢いは唐突におとずれた。