最後の引き出しを確認し終えたあたしは、力のない声でこたえた。
「……いん、届…」
「え?」
「お父さんたちの、婚姻届……」
「………」
提出しに、行ったんだ。
いつまでも納得しないあたしたちに見切りをつけて。
きっと今頃
ふたりで、役所に――…。
あたしは立っていられないほどに足の力が抜け、ふらふらと数歩、後ずさった。
背中に何かがぶつかり、放心状態のままふり返った。
それは描きかけの、油絵のキャンバス。
お父さんが那智との共通点を作るために描き始めたもの。
「……」
頭が真っ白で、何も考えられない。