『なち?』


『うん。うちのひとり息子。
5年生やから、藍ちゃんのひとつ下やね』



絵心のカケラもないあたしが見ても、その絵が放つ特別な力は、ハッキリとわかった。



深い、青。


空なのか海なのか
そのどちらでもないのか。


群青に染まった幻想の世界。


額縁の中の、異空間。




『へぇ~、すごいなぁ。那智くんの将来は画家だね、きっと』


『学校の先生方も、そう言ってくれるんよ。
本人はたいして興味なさそうなんやけどね』



和気あいあいと話すお父さんたちの横で

あたしは那智の世界に、ただ目を奪われていた。



出逢う前から、あたしは那智に囚われていたんだ――…