「俺はまだ眠たない」



そう言って那智は机にスケッチブックを広げ、適当に鉛筆を走らせ始めた。


眠くないわけ、ないじゃん。

あの雨の中あたしを探し回って、疲れきったに決ってる。



「那智……」



一緒に寝ようよ。



そう言いかけて、あたしは言葉を引っ込めた。



「……ありがと……。ベッド借りるね」


「あぁ」




布団にくるまると那智の匂いがした。


疲労しきった体は横になったとたん重くなり、だけど意識だけが冴えて寝つけない。


カーテンのむこうでは、空が白み始めていた。




「……朝になっちゃったね」


「なんや。まだ寝てへんのか?」


「枕が変わると寝られない」


「そんなデリケートなキャラちゃうやろ」