……逃げなきゃ!!


迷っている暇はもうなかった。

あたしは身を隠すこともせず、その場から走り出した。



「おいっ、なんか動いたぞ!」



後ろで男の声が響き、複数の足音が追ってくる。


怖くて声も出ないあたしとは裏腹に、おもしろがって笑い声さえ上げている彼ら。



「待ってってば~」


「俺ら、優しいよ~?」



気絶しそうなほどの恐怖だった。


濡れた砂の上で足がもつれ、うまく走れない。


考えたくもない最悪の映像が頭に浮かぶ。


もし、追いつかれたら……!




無我夢中で逃げて、気づけば砂浜を出ていた。


建物の陰にうずくまって、ガタガタと震えた。


息が上がり、涙が出る。


足音が近づいてきたら、と思うと怖くて、両手で耳をふさいだ。



助けて、那智。

那智――



そのときだった。