「藍……。どうしてお前は自分のことしか見えないんだ」
「……何よそれ。じゃあ那智のことあきらめてお父さんたちを祝福しろって言うの?」
「そんなことは言ってない!」
「言ってんじゃん!!」
殴られた頬に手をあてて叫ぶと、お父さんは歯がゆそうに目を見開いた。
「もういい……あたし、お父さんたちなんかいなくてもいい」
「何を言ってるんだ。自分がまだ中学生だってわかってるのか?」
――『お前はまだ14歳なんだぞ』
山内先生の言葉がよみがえった。
――『現実の厳しさを知らないから、そうやって傲慢でいられるんだ』
違う……。
――『自分を過信するな』
違う……!
お父さんなんかいなくても
那智さえいれば生きていける。