「藍。気をつけて帰れよ」
「……うん……」
ぼうっとしているあたしに、しっかりと傘を持たせ、那智はヒロトくんたちと遊びに行った。
帰り道。水たまりのできた道をひとりで歩きながら、胸の高鳴りがおさまらなかった。
那智の瞳。那智の声。那智の指。
すべてがあたしを昂らせる。
「那智……」
雨音に包まれながら名前をつぶやくと、体中が那智で満たされていく気がした。
……最近、お父さんたちは再婚について何も言ってこない。
そしてあたしの中には、確かな自信が芽生え始めている。
あたしたちは、特別なんだ。
世の中の人は運命に逆らえなくても、あたしと那智はちがう。
物事はいい方向に動いてる。
きっと。きっと大丈夫。
そうだよね? 那智。