『……はじめまして』


と、ぎこちなく頭を下げるあたしの横で

お父さんが心なしか、背筋を伸ばして言った。



『藍。この人が神木直子さん。
お父さんのイトコにあたる人だよ』




“お父さんのイトコ”


その言葉に偽りはなかった。

神木のおばさんは、正真正銘、父のイトコなのだから。


ただ、少しだけ

言葉が足りなかっただけなのだ。



“お父さんのイトコであり、

昔の恋人でもあるんだよ”



あのとき、そう教えてくれていれば……。