「あほ。なんで傘持ってへんねん」
「……忘れた」
「アマタツが“夕方から雨です”って言うてたやろ」
「とくダネ見てないもん」
那智はあたしを傘に入れ、柄の部分を握らせた。
「使えや。俺はツレと遊ぶから一緒に帰られへんし」
「でも那智が……」
「誰かの傘に入れてもらう」
「男同士で相合傘?」
あたしが微妙な顔をして聞くと、那智はふっと笑い、校舎に向かって声をかけた。
「ヒロトー。お前、傘2本持ってたよなぁ?」
「えー? ああ」
2年生の教室から返事が聞こえてくる。
「悪いけど1本、持ってきてくれるか?」
「おー。ちょっと待ってて」