「あ、この作者、知ってる~。デビュー作がドラマ化したんだよね。義理の兄妹で愛し合うやつ」
「読んだの?」
「うん。でも現実的に考えたら、“ないない”って思っちゃった。いくら血が繋がってなくても、兄妹じゃねえ」
屈託なく笑う亜美。
あたしはパタンと本を閉じた。
「そうでもないんじゃない」
下校時刻になると、タイミング悪く雨が降り出した。
梅雨なのに傘を忘れた自分を恨みながら、あたしはカバンで頭の上をカバーして校舎を出た。
このところ、ぐずぐずした天気が続いていたせいで、グラウンドがぬかるんで気持ち悪い。
「藍!」
後ろからの声にふり返ると、傘をさした那智がこちらに走って来た。