その日からお父さんたちは、再婚の話をパタリとしなくなった。
時々、油絵についてお父さんは那智に質問していたけど、那智が適当に流しているとそれも徐々になくなった。
ぎくしゃくとした空気の中。
もしかしたらこのまま何事もなく過ごしていけるんじゃないかと、
あたしは淡い希望を抱き始めていた。
――6月。
「桃崎さん、何読んでんのぉ?」
教室で読書していたところに声をかけられ、目線を上げる。
亜美があたしの机に両手をついて、ニコニコとこちらを見ていた。
「本」
答えになっていない返事に亜美は笑い、ブックカバーからうっすら透けたタイトルに目をこらす。