「こんなの、嫌だよ……」


震えながらにらみつけるあたしは、ちっとも迫力がなかっただろう。


那智はそんなあたしを、しらけたような、ガッカリしたような、冷たい顔で見下ろした。



「じゃあ、やめるか」


「……え?」


「ひとりで引き返せばええやん」


「……」



あたしはまばたきも忘れて、那智の瞳を凝視した。



……ひとりで、引き返す?


それはつまり、那智との関係を終わらせるということ。


どうしてそんなことを言うのか、あたしは理解できず混乱した。



手首を押さえつける那智の手には、まだ力がこめられたまま。


那智はあたしの反応を待ってる。

この場で決断させようとしている。