唇をぎゅっと結んで、那智の瞳を見つめ返していると。
「こんどは嫌がらへんねや?」
「……っ」
何か見透かされた気がして、あたしはその手を払った。
那智はクッと口元だけで笑い、あたしの手首を背もたれに押さえつけた。
「那智……?」
ドアのむこうは職員室。
だけどそんなのお構いなしに、那智はもう片方の手首も押さえてくる。
そして、唇を近付けた。
「やっ…。那智、ちょっとおかしいよ……!」
“おかしい”
その言葉が口をついて出た。
「この状況で、なんでそんなことすんの? 絶対に変だよ、那智」
あたしには理解できなかった。
今の行動も。
そして海での非道な行為や、先生に注意されたときの態度も。
まるで理解できなくて、怖いと思った。