美術室で見た光景とほぼ同じ――
熊野くんを引きずり回したあのときのような、冷徹な表情の那智がそこにいた。
「那智っ!」
あたしは飛び起きたけど間に合わず、那智の足の裏が、仰向けになった男の子のお腹に杭を打つようにおろされた。
吐くようなうめき声が上がり、あたしは体をこわばらせた。
そうしている間にも那智はもうひとりの男の子の脇腹を蹴りあげ、その衝撃で男の子は海の中に倒れた。
豪快な水しぶき。
海水を飲んだのか、それとも蹴られたせいか、男の子がガハガハと咳きこんだ。
「冷てー……。お前のせいで濡れたやんけ」
自分が蹴ったせいなのに、水しぶきがかかったズボンを不機嫌に見下ろしてつぶやく那智。
あまりの理不尽さと声の低さに、あたしは息をのんだ。