「喉かわいた。藍、ジュース」
「は? 自分で行ってきなよ」
「ケチー」
那智は勢いをつけてピョンっと起き上った。
「そんなんじゃ将来いい嫁になられへんぞ」
……なるつもり、ないもん。
誰かのお嫁さんになんか、なりたくない。
「那智。あたし……」
靴をはいて自販機の方に歩いて行く那智に声をかけた。
「ん?」
「コーラ。よろしくね」
「……シバく」
優しくにらまれて、あたしはクスクス笑った。
那智が離れると、あたしはもう一度まぶたを閉じた。
引き潮なのか、波の音が朝より静かになった気がする。
このまま時間が止まればいいのに……。
しばらくそうしていると、ふっと、まぶた越しの光が弱くなった。
那智が戻ってきたのかと思い、あたしは目を開けた。