那智の声は静かだった。
震えもせず、張りあげもせず、淡々としていた。
それがよけい、あたしには悲しかった。
「ごめん……」
「なんでお前があやまるねん」
「だって、あたしのお父さんのせいで……」
「アホか」
那智は体を起こし、あぐらをかくような体勢でスニーカーを脱いだ。
「ま、ええんちゃうか」
「……」
「結果的にお前のオトンのおかげで、俺らは会えたんやし」
「……」
「その運命に、お前は感謝しろや」
「なんであたしだけよ。…あんたも感謝しろ」
「ははっ」
那智は片方のスニーカーを持ち上げ、ゆっくりと傾けた。
中に入っていた砂が、細い一筋の流れを作り
砂時計のように落ちていった。