砂浜に突っこんだ自転車は、案の定タイヤを砂にとられ、
ぐねぐねと数メートル進んだところで、あっけなく横に倒れた。
「いったーい!」
あたしは砂の上で大の字になり、大げさな叫び声をあげた。
「だから危ないって言ったじゃん!」
「はははっ」
隣に倒れた那智が、あたしを見て笑っている。
意地悪だけど、楽しそうな顔で。
「……」
「ん? 何や?」
じっと見つめるあたしに気づき、那智が笑いを止めた。
「ううん。……那智が楽しそうに笑ってるから、嬉しいなーって思って」
「俺が楽しそうなん、レアか?」
「そんなことないけど。や、そんなことあるけど」
「どっちやねん」
砂のついた手で、那智があたしの頬をつねった。