お父さんの話に耳を傾けながら、那智の口元にはなぜか、うっすらと笑みが浮かんでいた。
楽しいときの笑顔とは違う、感情の読み取れない笑み。
何を考えてるの……?
答えの出ない、無意味な“話し合い”が続く。
おばさんは堪えきれなくなったように、口元を手で覆って涙を流す。
お父さんは眉間にしわを寄せ、深いため息を吐く。
そしてあたしは。
あたしはもう
那智以外に何もいらない。
翌朝、あたしたちは一緒に家を出た。
普段は別々に登校しているから、こんなのは初めてだ。
那智が自転車のうしろにあたしを乗せてくれたのも、初めてだった。