「でも、あなたやお母さんを傷つけてしまったのは確かよね。本当にごめんなさい」


ナツが深く頭をさげた。

「父は」喉が異様に乾く。咳払いをして、私は言った。

「父はあなたが好きなんだと聞いています。あなたもそうじゃないんですか?」


ナツは、ゆっくりと頭を上げると、


「でも、終わったの。まさか家を出るなんて思わなかった。バレなければいいのか、って言われちゃいそうだけど、誰かを傷つけてまで幸せにはなれない」

と静かに強く言った。