土曜日の午後、公園のトイレで着替えた私たちは、駅へと向かった。


夏が近いということもあって、少し歩いているだけで蒸し暑さが体に伝わる。


駅前通りまで来たところで、紗耶香が言った。


「光ってさ、好きな人いるの?」


「え、いないよー」

正彦の顔が浮かんだが、言えるわけもなく平気な顔で嘘をついた。


紗耶香は疑ってる様子もなく、「ふぅん」とつぶやいている。



飲み屋街に入り、まだシャッターや『準備中』の札がでている店をひとつずつ見て回った。