「速人さんってね、やさしい人でね。そこがいちばん好きなところだったの。だから、きっと嘘をつこうと思ってついたのじゃなかったと思うの」
まるで自分に言い聞かせるように、ナツは言う。


「ウチもそう思う。そんな器用な人じゃないよね。きっと、好きでたまらなかったからこそ、言えなかったんだよ」


「うん」


顔を見合わせて私たちは微笑む。



きっと、ナツも父をきちんと好きでいてくれたんだ、と伝わった。