こんなにどうしようもない感情を涙にするのは、いつ以来だろう。

 いつのまにかわたしは思い切り泣くことをどこかで我慢していたのかもしれない。それが大人になることだと、成長することだとでも思っていたんだろうか。こんな風にずっと、泣きたかったんじゃなかったのかな、わたし。

 大人になったふりをして、ずっと一五歳のままだったのかな。


「友達と仲直りしてえんだろ?」

 話を聞いて、幸登への質問がわたしのことだったことを察したのだろう。素直にこくりと頷いた。

「だったらすればいいじゃん」
「む、無理」

 だって前と一緒だもの。ううん、前よりもひどい。この数日、五年前に戻ってきてからわたしは全て、仲直りしようと思って、できると信じて選んだのに。

「無理とか言ってねえで、喧嘩したなら仲直りしろ、悪い事したなら謝れ、それ以外の方法なんてないだろ」
「……それでもダメだったら?」

 はっきりと断言する幸登を、手のひらで涙を何度も拭いながら見上げた。

ぼんやりと霞む視界の真ん中には、背を伸ばし、強い意思を込めた瞳でわたしを見る彼がいる。

「そんときはそんとき、仕方ない」

 そんなふうに、どうして強くいられるんだろう。

どうしたら、幸登みたいに前を向けるの。言われていることはわかっているのに、心がそれを受け入れられない。逃げ腰の心が、たじろぎながら彼の言葉に耳を傾けるだけだ。

「そんなの、無理だよ、もっと、傷つけるかもしれない。謝られたくないかもしれない、話をしたくないかもしれない、わたしの顔すらみたくないかもしれない」
「そりゃわかんねえけどさ、やる前からそんなこと考えてたらなんもできねえだろ」

 ぐっちゃぐちゃのマヌケな顔をしていうたのだろうわたしに、「きたねえ」と顔をくしゃりと崩して笑った。そういえば彼から受け取ったハンカチは握りしめたまま使っていない。

ぐいっと強引に、まるで子供の涙を拭うようにコートの裾から伸びていたパーカーで目元をこすられた。

「……痛い」

 すん、と鼻をすすると、「垂れてるぞ」と楽しそうに笑った。そして「お前の言うようにさ」と、ゆっくりとさっきの言葉の続きを告げる。