「ねえ、もしも……友達と好きな子が被ったら、どうする?」
唐突な質問に、彼は「はあ?」とマヌケな声を出した。
幸登だったら、どんなふうに考えるんだろう、と思った。その場その場で感じるままに行動する幸登は、どんな道を選んでゆくのだろう。どうしたら、後悔しないで済むのだろう。
幸登はしばらく意味を咀嚼するようにゆっくりと視線を空に向けて「さあ」とつぶやいた。
「そのとき考える。わかんねーや」
「自分も好きって言わないの?」
「さあ、どうするんだろうな」
考えているのか考えていないのか、軽い彼の言葉からでは全くわからなかった。
「もしも、自分はその友達に告げて、そしたらその友だちがなにも言わずに応援し始めたら?」
「そんなん分かるわけねえじゃん、そいつがそうしたなら、そうさせるんじゃねえの?」
「でも、自分の行動が、ずっと、ずっと自分や相手の後悔になって残るかもしれないじゃない」
「そんなこと言われても。そこは諦めろ」
「そんな簡単に言わないでよ……!」
思わず叫んでしまうと、落ち着け、とでもいうような強い風がびゅう、と音を出して通り過ぎた。目の前の彼は、わたしの突然の大声に、少し驚いている。
「ご、めん。八つ当たり」
「いいけど」
なんでこんなことで怒りだしてしまったのか、自分でもよくわからない。
はあーっと頭を抱えて俯くと、また泣きたい気持ちになってきた。情緒不安定すぎる。ぐるぐる同じことばかりを考えて、答えを出せない自分にやるせなさと憤りを感じる。
「お前にとって、その友だちはすげえ大事な存在なんだろうな」
その言葉が、わたしの胸の中のどこかにある涙腺ボタンをぽちっと押したんだろう。ぶわっと涙が溢れ出てきて、顔を覆う手の隙間からもこぼれ始める。
それでも必死に声を我慢していると、ひゃっくりが止まらなくなって、その度に涙がぼたぼたと地面に染みを作っていった。