興奮気味だった頭がすうっと冷静になってきて、自分の息が苦しいことに気づく。
マフラーで口許を覆っていた上に、三十分以上もほぼ全力で走っていたのだから、当たり前か。いつのまにか涙もすっかり乾いていて、そんな自分に嫌気が差した。
たしか、こっちの方に行くと公園があったはず。
うろ覚えの記憶で、スピードを落としてキョロキョロと当たりを見渡しながら公園を探した。
住宅街の隙間に細い階段があり、自転車を引いて登ると思っていた広く静かな公園が世間から隠れるようにそこにあった。
砂場らしきもの以外に遊具はなにもなく、周りは家と木々に囲まれているため誰もいない。日当たりがあまりよくないこともあって、ひんやりとした冷たい影に包まれていた。
隅っこには木で出来たベンチがひとつ。
付き合ってすぐの頃、幸登の家に行ったときに、なんとなくふたりでここに寄ったことを思い出す。
真夏の暑い日だったから、ここは涼しかった。大学生にもなって、砂場でよくわからないなにかを必死に作った記憶がある。結局完成はしなかったけれど。
自転車のスタンドを立てて、ベンチに座った。
裸の木々がカサカサと揺れる。無防備なのに、それでもすっくと立っているその姿はとても健気に見えた。同時に滑稽にも思える。なぜかじわりと涙が浮かんだ。
ああ、いやだ。
こんな風に泣いたってどうしようもないのに。泣いている場合じゃない。どうするのか、どうすればよかったのか、考えなくちゃいけないのに。
上半身を前に倒して、頭を抱えるように小さくなる。
ああ、もうこのまま丸まって小さくなってなにもかもなかったことにしたい――なんてことを考えてしまうわたしは、なんてずるくて弱いんだろう。そうじゃない、そうじゃないだろ、今考えることは。
止まらない涙に顔を濡らしながら自分を叱咤した。