「今坂がどうしてあたしを誘ったか知ってる？　ちなにプレゼントをしたいから、一緒に選んでくれないかって、言われたの」
　

　ぽろんとこぼれ落ちた涙は、テーブルの上に落ちて小さな水たまりを作った。

わたしは呆然と、それを眺めることしか出来なかった。
なんて言葉を口にすればいいのか、わからない。


「応援しようと、思ってたのに。それでいいと思ったのに。笑顔で、ちなの友だちとして祝福したかったのに、なんで」


　だって。

　それじゃあセイちゃんの気持ちは、どこに行っちゃうの。

　だってセイちゃんは、わたしに言ったじゃない。

　――『本当のことを言えばいいじゃない』って。五年前わたしに言ったから。わたしが黙っていたことで傷つけたから。

　でも、これだけはわかる。
　今、セイちゃんが泣いているのは、〝今の〟わたしのせいだ。


「今日は、帰って」


　顔を背けて、手の甲で涙を拭ったセイちゃんの声は震えていた。けれど、とても冷たい声だった。わたしは、こんなセイちゃんを見たことがない。

　怒っている。怒っていると同時に、傷ついている。苦しんでいる。五年前よりも、もっと。

「帰って」

　ここで、セイちゃんともっと話をするのが正しいのか。今日は帰って、また落ち着いて話すほうがいいのか。他にはどんな方法があるのか。

　いろんな選択肢を思い浮かべては消して、結局「ごめん」と小さな声で告げて立ち上がった。

自分の行動になにひとつ自信が持てないから、与えられた選択を受け入れたんだ。