五年前は、黙っているのがわたしだった。

 セイちゃんの告白を聞いて、わたしは自分も今坂くんを好きだとは言えなかった。けれどセイちゃんはわかっていた。

何度も聞かれたけれど、わたしはその度に「そんなことはない」と否定し続けた。その言葉を口にすればするほど好きだと強く感じていたにも関わらず。

『なんで言わないの?』
『なんでそんなことするの?』
『あたしがそれで喜ぶと思ってるの?』

 そう言ったセイちゃんだから、きっと話せばわかってくれるはずだ。もちろん、あのときのセイちゃんとわたし、今のセイちゃんとわたし、は違う。全く違う。でもそれは立場だけ。本音でぶつかれば、きっと。

 変わったじゃないか、いろいろ、些細な事だけれど変化はある。

あのとき、わたしは自分の気持をセイちゃんにひとつも伝えることができなかった。だから今度こそ。今度はそれを、選んで行動に移すんだ。

「ちなー電話終わったー?」
「あ、うん」

 ドアをこんこん、とノックされて振り返ると、化粧を落として薄っぺらい顔になった姉が壁にもたれかかっていた。いつの間にか入っていたらしい。

「あんた、明日デートなの?」

 はい、と手渡すと、目を輝かせている姉に気がついた。「え」と思わずたじろいでしまうと「どんな格好で行くきなの」とまるで取り調べをするかのように問いかける。

ずずい、と近づいてくる顔も、怖い。

 ただ、服装か、と自分のクローゼットを思い返してみるけれどどれも幼いものばかりだった。

今のわたしとは趣味が違うのは仕方ないとはいえ、あの中からデートファッションを選ぶのはなかなか難しそうだ。

 えーっと、と答えに困っていると、姉に腕を掴まれた。

「え? な、なに?」
「お姉ちゃんがコーディネートしてあげる!」

 いや、どんな服装をさせる気なのか。