明日、は今坂くんと出かける。だけど、これをセイちゃんに告げるべき? それとも黙っていたほうがいい? 

帰りに紗耶香と話したように、セイちゃんはごまかされたくないだろう。それに、まだ、わたしに今坂くんを好きなことを言っていない。

 どうすればいい? どっちが正しい?

「あ、明日は……出かける用事があって。その……今坂くん、と」

 結論が出ないまま、ただ〝ウソが言えない〟という理由で口にしてしまった。その直後に、やっぱり言わないほうがよかったんじゃないか、と不安が襲ってくる。

「なんだーそうなの? やったじゃん! その話、日曜日に聞かせてよね」
「……う、ん」

 やるう、と興奮気味の明るい声に、拍子抜けしてしまう。

 もしかして、セイちゃんは本当に今坂くんが好きじゃないんじゃないかとすら錯覚してしまいそうになる。けれどどこかで、無理して明るく振舞っているんじゃないかとも考えた。

 みんなで恋話をしたことは何度もある。紗耶香と関谷くんのこととか、真美が好きだった教育実習の先生のこととか。少し違うけれど大好きなアイドルのことも。

セイちゃんはそういった話の時、こんなにテンションが高かっただろうか。どんな話でもまじめに考えて、勇気づけたり笑うだけだったんじゃなかっただろうか。

「セイちゃーー」
『あ! ちょ、今からドラマ始まるじゃん! ちょっと観るから、また日曜日ね!』
「あ、う、うん」

 唐突に電話が終わって、バイバイ、を言う前に切られてしまった。

 やっぱり、いつもの、わたしの知っているセイちゃんとは違う。絶対に、違う。

 セイちゃんがわたしのために我慢をしているなら、そんなことしてほしくない。セイちゃんにも、頑張ってもらいたい。以前の五年前のセイちゃんのようにーーそう思うのはわたしの我儘なのかな。