今坂くんと知り合ったのは、中学二年生の頃。

通っていた小学校は校区が違ったから、中学に入った頃は知らなかったけれど、背が高く周りの男子の中でも大人っぽかった彼のことはいつからかなんとなく知っていた。

学年でモテると言われる男の子のグループにいたことも理由の一つだろう。

あとは、体育館での部活動は真ん中にネットを引いて半分をわたしたちのバレー部が、残り半分をバスケ部が使っていたこともある。一年であろうとも、彼はバスケ部で一番目立っていた。


 二年生もわたしは今坂くんと同じクラスではなかったから、本来ならば知り合うことはなかったけれど、セイちゃんが彼と同じクラスだったのだ。

教科書を忘れたからか、それともただ、遊びに行っただけなのかは覚えていない。

廊下の窓から顔を出してセイちゃんと話しているとき、前の席にいたのが今坂くんだった。


 今坂くんとセイちゃんは仲がよく、いつも話をしていたから、顔を出す度にわたしも話に混ざるのは自然な流れだった。

 わかっていたんだ、はじめから。

 セイちゃんが今坂くんに向ける笑顔の幸せそうな目元とか、ほんのりピンクに染まる頬だとか。よく彼の名前を口にすることとか。

紗耶香も真美も気づいていた。ただ、セイちゃんだけが「そんなことないってー」とはぐらかして認めなかっただけ。


 知っていたから、好きになんてなりたくなかった。好きにならないと思っていた。



 三年で同じクラスになったとき、出席番号順で座らされたわたしの隣が、今坂くんだった。

そのときはまだ『セイちゃんの好きな人』だと思っていた。もちろん、話しやすい男の子だな、とも感じていたけれど。

 ただ、それだけだったはずなのに。