教室に入ると、すぐ近くに座っていた紗耶香と、当時よく一緒に過ごしていた真美が「はよー!」と大きな声をかけてきた。

 わたしとセイちゃんと紗耶香と真美。四人でいつも行動していた。修学旅行の自由行動も一緒に過ごしたし、グループを作るときに離れたことはない。

 コートを教室の一番後ろに引っ掛けて、先に自分たちの席にかばんを置いた。わたしの席は前から四列目の、窓から二列内側の席。前の席にいた男の子が「よ」と挨拶をしてきたので「おはよ」と返事をした。

 男の子たちは比較的みんな体が小さい。女の子に比べると、まだ子供のように見えた。それに少しぶっきらぼうだ。

そういえば真美が、高校に入ってから男子が優しくなった、と以前言っていた気がする。大学で出会った男の子のほとんどが女の子に対して自然に優しく振る舞っていた。

 隣の席はまだ空いていて、学校に来ていないらしい。
 きっと、ぎりぎりに教室に駆け込んでくるのだろう。

「ちなー?」
「はあい」

 名前を呼ばれて慌ててみんなの席に向かった。

 話のネタは、セイちゃんと話したような内容。最近ハマっているアーティストの話題だとか、見ているドラマの展開だとか。

「あのドラマほんっと面白いよねー、もうかっこいい!」
「あんな彼氏欲しいんだけど!」

 会話を聞いていると、徐々にドラマのことを思い出す。わたしも確か毎週録画して見ていたっけ。五年後の世界では、人気だったヒーロー役の彼はテレビで全く見なくなったけれど。あのドラマで脇役で出ていた男の子のほうが人気が出て、毎クール何かのドラマに出ている。

「確か……最後彼が事故に遭うんだっけ?」

 ぽつりと呟くと、三人が声を合わせて「えー!」と大声を出した。

「なにそれ! そんなラストだったら泣く!」
「え? あ、そ、そうだよね」

 三人の反応に、ドラマはそこまで放送されていないんだと理解した。慌てて「そうなったらいやだよね」とただの妄想だったことをアピールした。聞いていると、最終回は今日らしい。

 怪しまれたらどうしようと思ったけれど、すぐにアイドルグループの話になり、次のクールで始まるドラマの話にも変わった。気がつけあっという間に時間が経って、予鈴が鳴り響く。

 自分たちの席に戻ろうと、教室のみんなが立ち上がり移動し始める。わたしの隣の席はまだ空いている。胸がキリキリと痛む。

会いたいのか、会いたくないのか、どちらの動揺なのかわからない。