セイちゃんとわたしは小学校から同じで、低学年の頃の集団登校で同じグループになってから、ずっと一緒に学校に行っていた。

中学に入ってからは部活も一緒だったから帰りも並んで帰った。わたしの家より少し先にセイちゃんの住むマンションがあり、朝はセイちゃんがわたしの家まで迎えに来てくれる。

小学校の頃は八時に、中学は遠くなったから七時四五分に。

 住宅街を抜けて、コンビニの前を通ってから気分によって広い道路の歩道を歩いたり、入り組んだ狭い住宅街を通たりする。

どの家も築年数は経っているような和風で、途中塀から顔だけを出してわたしたちに吠える犬がいる。

直ぐ側は林になっていて、広く桜の木が何本も並んでいる公園に差し掛かると、春は視界がピンクと緑に染まる。

 大好きだった道。けれど、大嫌いになった道。


「ちな、聞いてるー?」
「あ、ごめん、ちょっとぼけっとしてた」
「もう!」


 ぷくっと頬を膨らませたセイちゃんは、かわいらしかった。

 一応感覚が二十歳だからか、中学生のセイちゃんを見ていると、年下の女の子と歩いているみたいな感覚になる。

 さっきからほとんどセイちゃんが話しているのを、わたしが「うん」とか「そうだよね」と相槌を打っているだけだ。

以前は同じように盛り上がっていたような気がする。セイちゃんの会話の大半が流行りのドラマやアイドルの話ばかりで、ついていけない、というのが理由だけれど。

 そのアイドル、女優の女の人と結婚して離婚したよ、なんて言えるわけがない。それが真実かどうかも今のわたしには判断ができないし。


「なんか、今日のちな、おとなしいね。っていうか落ち着いてるっていうか」
「え? な、なんで?」ぎくりと肩を震わせながらできるだけ自然に驚いてみせる。
「んー、なんだろ。よくわかんないけど」


 恐らく、中身が二十歳の感覚だからだろう。記憶ではわたしはこの日から五年間を過ごしていた。そおれなりの経験を積んで、多少なりとも性格は変わったのだろう。無邪気に毎日を過ごしていた頃とは、違う。

 ただ、あまり違和感を抱かれないように、できるだけ会話を重ねて明るく務めた。