「ねえ、幸登」
涙が少し治まるのを待って、深呼吸をしてから幸登に声をかけた。泣いていることをさ悟られないように、できるだけいつもの口調で。
「もしも、過去に戻れるよ、って言われたらどうする?」
「はあ?」
寝室の幸登は素っ頓狂な声を上げてから「んー」と考え出した。
「いや、戻らねえだろ。今でいいし、俺」
わたしも、今はそう思う。だから、幸登もそう思ってくれていることが嬉しい。「うん」と返事をして写真をもう一度見つめた。
わたしたちはとても、かわいい顔で笑っている。
少し引きつっているけれど、笑っている。
「あ、でももし戻ったとしたらさあ」
彼が寝室のドアからひょこっと顔を出して話を続けた。
顔を上げると、彼と目が合う。涙に気づいた様子だったけれど、なにも言わずに笑った。
くしゃりと顔を崩して、子供のように笑う幸登は、一五歳のときと全く変わっていなくて不意に胸が小さくとくんと跳ねた。
「今度は俺から告白して、もう一度、ちなと付き合うよ」
*.○。・.: * End