いつまでも泣いているしか出来ない自分は、なんてかっこ悪いんだろう。五年前も今も、わたしはなにも変わっていない。

 ぐっと顎を引いて、背筋をぴんと伸ばしセイちゃんを見据えた。涙はちっとも止まらないけれど、だからっていつまでもうつむいているわけにはいかない。


「……わかった」


 その言葉の後に、心のなかでだけ「ありがとう」と付け足す。

 わたしの返事にセイちゃんは、刹那、顔をほころばせてから「じゃあね」と踵を返した。わたしたちの距離は、一度離れてから一歩も近づかなかった。

 セイちゃんは決めたんだね。何度繰り返したって、わたしがなにをしたって、セイちゃんはセイちゃんらしく、自分のしたい答えを導き出すんだ。

 一五歳のセイちゃんの意志は、変わらない。
 それは、セイちゃんが必死に、真剣に、選んで決めて過ごしているから。

 
 もしも、わたしが今、記憶を持たないまま一五歳に戻っていたとしたら、この一週間をどう過ごしていたのかな。



 空を仰いで息を吸い込むと、冷たい冬の空気が体の中に入ってくる。
 この一五歳の日々で、それぞれが選ぶこと。ケンカしたり告白したり、泣いたり。

 じゃあ、今、二十歳のわたしが選ぶことは?



 ――わたしも、決めなくちゃいけない。選ばなくちゃいけない。