放課後のチャイムが鳴ると、教室は一気に騒がしくなった。
部活やバイトに向かう人、友達と寄り道する場所を話し合う人たちと高校生にとっては放課後はイベントみたいなものだ。
「さぁ、帰るか」
そんな俺に予定は特にない。
バイトもしているが、ほとんどは土日ばかりだからな。
あまりバイトを詰めすぎて、勉強が疎かになるのも困る。
そこまで頭が良いわけでもないからね。
俺はリュックサックを背負い、教室を後にした。
今日は黒瀬と一緒に弁当を食べたし、少しだけ脱ボッチはできた気がする。
ただ一緒に弁当を食べただけだが、大きな進歩だ。
「んー、わざわざ帰るだけのために一組に寄るのもな……」
友達のほとんどが部活とバイトだから、寄った時には先に帰っているかもしれない。
見に行ってもいなければ恥ずかしいだけだしな。
そんなことを思いながら昇降口に行くと、黒瀬が靴に履き替えていた。
さっきまで教室にいたはずなのに、いつの間に昇降口に来たんだ。
大きいから目立つはずなのに、相変わらず忍者みたいだ。
「黒瀬はそのまま帰るの?」
「ああ……」
黒瀬は短く答えると、ゆっくり体を起こした。
しゃがみ込んでても大きかったけど、改めて横に立つと大きさを実感させられる。
「黒瀬って電車通学?」
「ああ」
「俺も同じ」
黒瀬はジーッと俺を見つめてくる。
「どうした?」
「いや……」
何か言いかけた気がしたが、黒瀬はそのまま歩き出した。
なんだったんだ?
まあいいか。
同じ方向なら一緒に帰ればいい。
「そういえば、黒瀬って部活とかバイトはやってるの?」
「やってない」
「そうか」
クラス以外に居場所があるのかと思ったけど、部活やバイトをしていなければ人と関わることは少ない。
黒瀬が少しだけ俺の方を見る。
「なにか意味があるのか?」
「いや、人見知りなんだなって思っただけ」
人見知りじゃなければ気の合うやつの一人ぐらいはいるはずだ。
でも、黒瀬ってそんな感じがしないんだよな。
まるで孤独を好むような人っていうのか……。
「黒川は?」
「んー、俺も黒瀬と同じようなものだな」
「そう」
会話が途切れる。
やっぱり黒瀬は話すのが苦手なのかもしれない。
でも、昼休みよりかは少しマシになった気がする。
返事は短いけど、ちゃんと返してくれるしな。
さすがボッチ同盟を組んだだけのことはある。
「黒瀬ってさ」
「……なに?」
「意外と普通に話せるんだな」
言った瞬間、黒瀬の足が止まった。
あれ?
何か変なことを言っただろうか。
体格の良さを褒めたら不機嫌になるぐらいだ。
俺は必死に言い訳を探す。
「……普通?」
「いや……もっと無口で何も話さないタイプかと思ってた」
「……」
黒瀬は少し考えるように黙った。
あー、何でまた思ったことを言っちゃうかな。
言い訳を探す前に本当のことを言っちゃったよ。
そんな自分に嫌悪感を抱く。
「黒川が話しかけるから」
予想外の返事だった。
どうやら俺の言ったことを気にしてはなさそうだ。
「俺が?」
「うん」
話すのが苦手なら無視するのも選択だ。
現に高橋に声をかけられた時は逃げていた。
俺もあの陽キャな感じに慣れてないから、黒瀬を追いかけたんだけどな。
「別に話しかけられたら返すだろ」
「そうなの? じゃあ、せめて返事はしてくれよ」
「……」
まさかそこで黙られるとは。
だけど、黒瀬の口元は少し笑っているような気がした。
「返事は?」
「わかった」
黒瀬の声は小さかった。
でも、しっかりと返事をしていたから、無視はしないはずだ。
初めの時は返事も〝ああ〟しか言ってなかったからね。
これでペアになった時の気まずさがなくなるって思うとホッとする。
「まあ、これからも俺が話しかけるからさ」
俺が笑いながら伝えると、黒瀬は少しだけ目を伏せた。
ひょっとして――。
「ボッチ同盟だもんな」
「ははは、気に入ってるじゃん!」
俺は肘で少し体を突くが、全くびくともしなかった。
むしろ俺が弾き返されそうなほど体幹が強い。
でも、どこか黒瀬は昼休みの時よりも少し柔らかい表情をしていた。
気づけば駅まであっという間だ。
「黒瀬はどっち方面? 俺はあっちだけど」
「あっち」
「なら、反対だな」
俺と黒瀬は帰り道が反対らしい。
改札を通ると手を上げる。
「じゃあ、また明日」
「……また明日」
黒瀬も小さく返した。
手を上げるとさらに高いな。
電光掲示板が触れるんじゃないかと思うほどだ。
「でも、黒瀬と仲良くなれたならよかった」
俺は見上げて痛くなった首を優しくマッサージする。
黒瀬といたら慣れるまではしばらくの間首が痛くなりそうだ。
部活やバイトに向かう人、友達と寄り道する場所を話し合う人たちと高校生にとっては放課後はイベントみたいなものだ。
「さぁ、帰るか」
そんな俺に予定は特にない。
バイトもしているが、ほとんどは土日ばかりだからな。
あまりバイトを詰めすぎて、勉強が疎かになるのも困る。
そこまで頭が良いわけでもないからね。
俺はリュックサックを背負い、教室を後にした。
今日は黒瀬と一緒に弁当を食べたし、少しだけ脱ボッチはできた気がする。
ただ一緒に弁当を食べただけだが、大きな進歩だ。
「んー、わざわざ帰るだけのために一組に寄るのもな……」
友達のほとんどが部活とバイトだから、寄った時には先に帰っているかもしれない。
見に行ってもいなければ恥ずかしいだけだしな。
そんなことを思いながら昇降口に行くと、黒瀬が靴に履き替えていた。
さっきまで教室にいたはずなのに、いつの間に昇降口に来たんだ。
大きいから目立つはずなのに、相変わらず忍者みたいだ。
「黒瀬はそのまま帰るの?」
「ああ……」
黒瀬は短く答えると、ゆっくり体を起こした。
しゃがみ込んでても大きかったけど、改めて横に立つと大きさを実感させられる。
「黒瀬って電車通学?」
「ああ」
「俺も同じ」
黒瀬はジーッと俺を見つめてくる。
「どうした?」
「いや……」
何か言いかけた気がしたが、黒瀬はそのまま歩き出した。
なんだったんだ?
まあいいか。
同じ方向なら一緒に帰ればいい。
「そういえば、黒瀬って部活とかバイトはやってるの?」
「やってない」
「そうか」
クラス以外に居場所があるのかと思ったけど、部活やバイトをしていなければ人と関わることは少ない。
黒瀬が少しだけ俺の方を見る。
「なにか意味があるのか?」
「いや、人見知りなんだなって思っただけ」
人見知りじゃなければ気の合うやつの一人ぐらいはいるはずだ。
でも、黒瀬ってそんな感じがしないんだよな。
まるで孤独を好むような人っていうのか……。
「黒川は?」
「んー、俺も黒瀬と同じようなものだな」
「そう」
会話が途切れる。
やっぱり黒瀬は話すのが苦手なのかもしれない。
でも、昼休みよりかは少しマシになった気がする。
返事は短いけど、ちゃんと返してくれるしな。
さすがボッチ同盟を組んだだけのことはある。
「黒瀬ってさ」
「……なに?」
「意外と普通に話せるんだな」
言った瞬間、黒瀬の足が止まった。
あれ?
何か変なことを言っただろうか。
体格の良さを褒めたら不機嫌になるぐらいだ。
俺は必死に言い訳を探す。
「……普通?」
「いや……もっと無口で何も話さないタイプかと思ってた」
「……」
黒瀬は少し考えるように黙った。
あー、何でまた思ったことを言っちゃうかな。
言い訳を探す前に本当のことを言っちゃったよ。
そんな自分に嫌悪感を抱く。
「黒川が話しかけるから」
予想外の返事だった。
どうやら俺の言ったことを気にしてはなさそうだ。
「俺が?」
「うん」
話すのが苦手なら無視するのも選択だ。
現に高橋に声をかけられた時は逃げていた。
俺もあの陽キャな感じに慣れてないから、黒瀬を追いかけたんだけどな。
「別に話しかけられたら返すだろ」
「そうなの? じゃあ、せめて返事はしてくれよ」
「……」
まさかそこで黙られるとは。
だけど、黒瀬の口元は少し笑っているような気がした。
「返事は?」
「わかった」
黒瀬の声は小さかった。
でも、しっかりと返事をしていたから、無視はしないはずだ。
初めの時は返事も〝ああ〟しか言ってなかったからね。
これでペアになった時の気まずさがなくなるって思うとホッとする。
「まあ、これからも俺が話しかけるからさ」
俺が笑いながら伝えると、黒瀬は少しだけ目を伏せた。
ひょっとして――。
「ボッチ同盟だもんな」
「ははは、気に入ってるじゃん!」
俺は肘で少し体を突くが、全くびくともしなかった。
むしろ俺が弾き返されそうなほど体幹が強い。
でも、どこか黒瀬は昼休みの時よりも少し柔らかい表情をしていた。
気づけば駅まであっという間だ。
「黒瀬はどっち方面? 俺はあっちだけど」
「あっち」
「なら、反対だな」
俺と黒瀬は帰り道が反対らしい。
改札を通ると手を上げる。
「じゃあ、また明日」
「……また明日」
黒瀬も小さく返した。
手を上げるとさらに高いな。
電光掲示板が触れるんじゃないかと思うほどだ。
「でも、黒瀬と仲良くなれたならよかった」
俺は見上げて痛くなった首を優しくマッサージする。
黒瀬といたら慣れるまではしばらくの間首が痛くなりそうだ。



