「ねえ、一緒にお昼食べてもいい?」
「こっちで一緒に食べようよ」
周囲ではお昼の誘いをする声で溢れていた。
『湊、先に食べてるぞー』
スマートフォンにも、友達からのメッセージが届いていた。
友達は一組だけど、お昼休みぐらいは時間があるから行けるだろう。
そんなことを思いながら立ち上がると、後ろにいる黒瀬が視界に入った。
そこには一人で弁当を広げる黒瀬がいた。
周囲を見回しても、教室の中で一人で食べているのは黒瀬だけだろう。
みんな机をくっつけて食べる人ばかりだ。
「黒瀬」
俺が呼ぶと、黒瀬が顔を上げる。
相変わらず前髪に隠れて目が見えない。
だが、こっちを見ている気はする。
「一緒に食べてもいい?」
一瞬、黒瀬は驚いたように固まった。
今週末には体力テストがあるし、そこでは黒瀬と常に行動することになる。
身体測定の時に少し気まずくなったから、ここで交流するのも一つの手だろう。
それに一組のあいつらはもう食べ始めているから、俺が後に行っても一人残されるだけだ。
「俺と?」
「うん」
黒瀬は少し困ったように視線を逸らす。
ちなみに今は顔がちゃんと横に向いたから、すぐに気づいたぞ。
俺はそんな黒瀬をジーッと見つめる。
「やめた方がいい」
「なんで?」
「俺といたら変に見られる」
その言葉に少しだけ引っかかった。
きっと体格がいいから目立つと言いたいのだろう。
ただ、それよりも一人で昼飯を食べている方が変なやつに見える。
周囲は楽しくワイワイとしているからな。
「別にいいじゃん」
俺は自分の机を黒瀬の前へ動かす。
「それに俺たち似てると思うんだよね」
「似てる?」
「ああ、ボッチだからな」
黒瀬は少しだけ目を丸くした。
体格が良くて目立つのは仕方ない。
ただ、一番目立つのは集団で行動していないからだ。
要は脱ボッチをすればいいだけのこと。
「俺たち〝ボッチ同盟〟を組まない?」
「……何それ」
初めて黒瀬が呆れたような声を出した。
いや、言っている俺も呆れているからな。
だが、高校生活目立たずに過ごすにはそれしか方法はないはず。
それに今になって友達になろうとか恥ずかしくて言えない。
「小学生かよ!」って黒瀬が突っ込む想像もできないからな。
「今考えた利害関係だな」
「いや、別に俺は困ってないが……」
「黒瀬が気づいてないだけだ。分かりやすいし、俺たちがボッチなのは避けような」
高校二年生になってまで、一人で昼飯を食べているからいじめられているとか、先生に勘違いされて困るのは黒瀬だ。
黒瀬はしばらく黙っていた。
弁当を食べる手も止まっているから、相当考えているのだろう。
そんなに俺と一緒に食べるのが嫌なのか?
「……悪くない」
ボソッと小さな声が確かに聞こえた。
ただ、返事をするだけだと思ったのに、意外にも俺の案は受け入れられたようだ。
俺は一組のやつらにメッセージして弁当を開く。
今日も相変わらず可愛らしい弁当だ。
中学生の妹がいるから、一緒に作ってもらうと華やかなものが多い。
「……なんだよ?」
黒瀬はジーッと俺の方を見ていた。
視線の先はきっと俺の唐揚げだろう。
「あげないぞ?」
「いらない」
「ふぅーん。我が家の唐揚げは美味いんだからな」
そう言って、俺は唐揚げを口の中に入れる。
やけに正面から視線を感じるが、俺を観察しながら食べて楽しいのだろうか。
何か話すわけでもなく、静かに食べていく俺たち。
教室のざわつきとは異なるが、弁当をこんなに真剣に食べたこともないから悪くなかった。
冷めても美味しいように母さんが考えて弁当を作っているんだろうな。
帰ったらお礼でも言っておこう。
こうして俺たちは高校二年生になって、初めての友達……いや、ボッチ同士の同盟を組むことになった。
「こっちで一緒に食べようよ」
周囲ではお昼の誘いをする声で溢れていた。
『湊、先に食べてるぞー』
スマートフォンにも、友達からのメッセージが届いていた。
友達は一組だけど、お昼休みぐらいは時間があるから行けるだろう。
そんなことを思いながら立ち上がると、後ろにいる黒瀬が視界に入った。
そこには一人で弁当を広げる黒瀬がいた。
周囲を見回しても、教室の中で一人で食べているのは黒瀬だけだろう。
みんな机をくっつけて食べる人ばかりだ。
「黒瀬」
俺が呼ぶと、黒瀬が顔を上げる。
相変わらず前髪に隠れて目が見えない。
だが、こっちを見ている気はする。
「一緒に食べてもいい?」
一瞬、黒瀬は驚いたように固まった。
今週末には体力テストがあるし、そこでは黒瀬と常に行動することになる。
身体測定の時に少し気まずくなったから、ここで交流するのも一つの手だろう。
それに一組のあいつらはもう食べ始めているから、俺が後に行っても一人残されるだけだ。
「俺と?」
「うん」
黒瀬は少し困ったように視線を逸らす。
ちなみに今は顔がちゃんと横に向いたから、すぐに気づいたぞ。
俺はそんな黒瀬をジーッと見つめる。
「やめた方がいい」
「なんで?」
「俺といたら変に見られる」
その言葉に少しだけ引っかかった。
きっと体格がいいから目立つと言いたいのだろう。
ただ、それよりも一人で昼飯を食べている方が変なやつに見える。
周囲は楽しくワイワイとしているからな。
「別にいいじゃん」
俺は自分の机を黒瀬の前へ動かす。
「それに俺たち似てると思うんだよね」
「似てる?」
「ああ、ボッチだからな」
黒瀬は少しだけ目を丸くした。
体格が良くて目立つのは仕方ない。
ただ、一番目立つのは集団で行動していないからだ。
要は脱ボッチをすればいいだけのこと。
「俺たち〝ボッチ同盟〟を組まない?」
「……何それ」
初めて黒瀬が呆れたような声を出した。
いや、言っている俺も呆れているからな。
だが、高校生活目立たずに過ごすにはそれしか方法はないはず。
それに今になって友達になろうとか恥ずかしくて言えない。
「小学生かよ!」って黒瀬が突っ込む想像もできないからな。
「今考えた利害関係だな」
「いや、別に俺は困ってないが……」
「黒瀬が気づいてないだけだ。分かりやすいし、俺たちがボッチなのは避けような」
高校二年生になってまで、一人で昼飯を食べているからいじめられているとか、先生に勘違いされて困るのは黒瀬だ。
黒瀬はしばらく黙っていた。
弁当を食べる手も止まっているから、相当考えているのだろう。
そんなに俺と一緒に食べるのが嫌なのか?
「……悪くない」
ボソッと小さな声が確かに聞こえた。
ただ、返事をするだけだと思ったのに、意外にも俺の案は受け入れられたようだ。
俺は一組のやつらにメッセージして弁当を開く。
今日も相変わらず可愛らしい弁当だ。
中学生の妹がいるから、一緒に作ってもらうと華やかなものが多い。
「……なんだよ?」
黒瀬はジーッと俺の方を見ていた。
視線の先はきっと俺の唐揚げだろう。
「あげないぞ?」
「いらない」
「ふぅーん。我が家の唐揚げは美味いんだからな」
そう言って、俺は唐揚げを口の中に入れる。
やけに正面から視線を感じるが、俺を観察しながら食べて楽しいのだろうか。
何か話すわけでもなく、静かに食べていく俺たち。
教室のざわつきとは異なるが、弁当をこんなに真剣に食べたこともないから悪くなかった。
冷めても美味しいように母さんが考えて弁当を作っているんだろうな。
帰ったらお礼でも言っておこう。
こうして俺たちは高校二年生になって、初めての友達……いや、ボッチ同士の同盟を組むことになった。



