目の前に湊がいない授業は時間が早く感じた。
時折、プリントを渡すたびに俺の手を突いて笑う湊はいない。
眠たくてカクカクと頭が落ちそうになっては、バレてないかとキョロキョロする湊もいない。
視界にいる湊がいないだけで、全く景色が違う。
昼休みになり、俺は階段を登っていつもの場所に向かう。
当然、湊はいない。
今日も自分で作った卵焼きばかりの弁当箱を開ける。
「今日のおかず何?」
「それ好きだな」
「ちゃんと野菜を食べろよ」
そんな湊の声は聞こえない。
わかっていたことなのに少し寂しい。
今までは教室の中で一人で食べていたのに、こんなに寂しく感じるとは思わなかった。
静かに箸が弁当箱を突く音と俺の咀嚼音だけが響く。
……いや、誰かが階段を登ってくる音も聞こえていたか。
「こんなところで食べてたのか」
顔を上げると、高橋が立っていた。
手にはコンビニの袋を持っており、パンがいくつも飛び出していた。
「いつもここでみーちゃんと食べてるのか?」
「ああ」
俺は少し無愛想に返事をする。
湊のことをみーちゃんと馴れ馴れしく呼ばないでほしい。
そんなことを思っていると、高橋は俺の向かいに座った。
「なあ、れんれん」
「なんだ?」
「お前さ」
少し考えるようにしてから高橋は俺を見つめる。
「黒川以外を寄せつけないのはなんでだ?」
「……」
「お前、黒川に依存しているだろ」
その言葉に俺は箸が止まる。
俺が湊に依存している?
そんなつもりは全くない。
俺たちはボッチ同盟だから一緒にいるだけだ。
バイトが一緒なのも喫茶店のマスターに頼まれただけで。
……いや、ボッチ同盟じゃなくても、俺は湊と一緒にいたい。
だが、それが依存していることになるのか?
「依存していない」
「なら、なんでもっと他のやつと話さないんだ?」
別に話さないわけではない。
何を話したらいいのかわからないだけだ。
何も話さないあの空気が苦手で、みんなが何を考えているのかわからない。
どうせ俺のことを悪く言っているはず。
そんな考えが自然と出てきてしまう。
「まあ、今まで一人でいたから今の環境にびっくりしていると思うけど、みんなれんれんに興味があって声をかけてきてるんだぞ?」
「俺は興味ない」
「おい、こら! そういうところだ。別に興味なくても構わないけど、普通に話せないとこれからの高校生活どうするんだ?」
「どうって……」
「だって、高校生って言ったら青春だぞ! 体育祭に文化祭。来月には遠足があるし、一大イベントの修学旅行がある」
俺の中でイベントは普通の日と変わらない。
ただ、授業がない日だからな。
「そんな時に黒川を縛ってどうする」
「縛ってない……」
「なら、もっと他の人とも関わらせてやれよ。黒川の友達も一組にいるだろ」
言葉が出なかった。
確かに体力テストの日に湊は一組の友達にお昼を食べようと声をかけられていた。
今まで俺はずっと湊と一緒にいて、湊の時間を奪っていたかもしれない。
毎日が楽しくて、考えたことすらなかった。
「今のお前なら普通に話しかけるやつはいる」
高橋はパンを食べながら、話を続ける。
「黒川がいるから安心するのは分かる。でもな、黒川だってお前が全てじゃないぞ」
その言葉にハッとさせられた。
湊には湊の友達がいるし、生活がある。
「まあ、みーちゃんが癒し系だから一緒にいたいのはわからなくないが」
高橋の言葉に俺は大きく頷く。
確かに湊といたら、元気になるからな。
「くくく、本当に黒川のことが好きなんだな」
その言葉が胸に刺さった。
俺って湊のことが好きなのか?
考えたこともなかった。
友達として好きだけど、それよりもボッチ同盟として大事な存在だって印象が強い。
「青春は人生に一回しかないんだからな!」
高橋は胸を張っていた。
よくわからないがやつだが、悪いやつではないのだろう。
わざわざパンを持って、俺を探しにくるような男だからな。
「俺いいこと言ったな」
ニヤリと笑う高橋。
……やっぱり関わらない方が良さそうだな。
悪いやつではないが、おかしいやつなのは間違いない。
俺は高橋がいないものとして弁当を食べ続けた。
「れんれん? さっきから俺のこと無視してないか?」
また明日湊が来たら、今日の話をしてみようかな。
時折、プリントを渡すたびに俺の手を突いて笑う湊はいない。
眠たくてカクカクと頭が落ちそうになっては、バレてないかとキョロキョロする湊もいない。
視界にいる湊がいないだけで、全く景色が違う。
昼休みになり、俺は階段を登っていつもの場所に向かう。
当然、湊はいない。
今日も自分で作った卵焼きばかりの弁当箱を開ける。
「今日のおかず何?」
「それ好きだな」
「ちゃんと野菜を食べろよ」
そんな湊の声は聞こえない。
わかっていたことなのに少し寂しい。
今までは教室の中で一人で食べていたのに、こんなに寂しく感じるとは思わなかった。
静かに箸が弁当箱を突く音と俺の咀嚼音だけが響く。
……いや、誰かが階段を登ってくる音も聞こえていたか。
「こんなところで食べてたのか」
顔を上げると、高橋が立っていた。
手にはコンビニの袋を持っており、パンがいくつも飛び出していた。
「いつもここでみーちゃんと食べてるのか?」
「ああ」
俺は少し無愛想に返事をする。
湊のことをみーちゃんと馴れ馴れしく呼ばないでほしい。
そんなことを思っていると、高橋は俺の向かいに座った。
「なあ、れんれん」
「なんだ?」
「お前さ」
少し考えるようにしてから高橋は俺を見つめる。
「黒川以外を寄せつけないのはなんでだ?」
「……」
「お前、黒川に依存しているだろ」
その言葉に俺は箸が止まる。
俺が湊に依存している?
そんなつもりは全くない。
俺たちはボッチ同盟だから一緒にいるだけだ。
バイトが一緒なのも喫茶店のマスターに頼まれただけで。
……いや、ボッチ同盟じゃなくても、俺は湊と一緒にいたい。
だが、それが依存していることになるのか?
「依存していない」
「なら、なんでもっと他のやつと話さないんだ?」
別に話さないわけではない。
何を話したらいいのかわからないだけだ。
何も話さないあの空気が苦手で、みんなが何を考えているのかわからない。
どうせ俺のことを悪く言っているはず。
そんな考えが自然と出てきてしまう。
「まあ、今まで一人でいたから今の環境にびっくりしていると思うけど、みんなれんれんに興味があって声をかけてきてるんだぞ?」
「俺は興味ない」
「おい、こら! そういうところだ。別に興味なくても構わないけど、普通に話せないとこれからの高校生活どうするんだ?」
「どうって……」
「だって、高校生って言ったら青春だぞ! 体育祭に文化祭。来月には遠足があるし、一大イベントの修学旅行がある」
俺の中でイベントは普通の日と変わらない。
ただ、授業がない日だからな。
「そんな時に黒川を縛ってどうする」
「縛ってない……」
「なら、もっと他の人とも関わらせてやれよ。黒川の友達も一組にいるだろ」
言葉が出なかった。
確かに体力テストの日に湊は一組の友達にお昼を食べようと声をかけられていた。
今まで俺はずっと湊と一緒にいて、湊の時間を奪っていたかもしれない。
毎日が楽しくて、考えたことすらなかった。
「今のお前なら普通に話しかけるやつはいる」
高橋はパンを食べながら、話を続ける。
「黒川がいるから安心するのは分かる。でもな、黒川だってお前が全てじゃないぞ」
その言葉にハッとさせられた。
湊には湊の友達がいるし、生活がある。
「まあ、みーちゃんが癒し系だから一緒にいたいのはわからなくないが」
高橋の言葉に俺は大きく頷く。
確かに湊といたら、元気になるからな。
「くくく、本当に黒川のことが好きなんだな」
その言葉が胸に刺さった。
俺って湊のことが好きなのか?
考えたこともなかった。
友達として好きだけど、それよりもボッチ同盟として大事な存在だって印象が強い。
「青春は人生に一回しかないんだからな!」
高橋は胸を張っていた。
よくわからないがやつだが、悪いやつではないのだろう。
わざわざパンを持って、俺を探しにくるような男だからな。
「俺いいこと言ったな」
ニヤリと笑う高橋。
……やっぱり関わらない方が良さそうだな。
悪いやつではないが、おかしいやつなのは間違いない。
俺は高橋がいないものとして弁当を食べ続けた。
「れんれん? さっきから俺のこと無視してないか?」
また明日湊が来たら、今日の話をしてみようかな。



