ボッチ同盟を組んだだけなのに、どこか彼の距離感がおかしい

「今日はどこにいく?」

 帰りのホームルームが終わり、蓮が声をかけてきた。
 だが、俺は何を言っているのかわからず首を傾げる。
 蓮と予定なんてあったっけ?

「午前中に俺と予定があるって」
「あっ、そうだったな」

 蓮に言われてやっと思い出した。
 蓮を助けるために、予定があるって嘘をついたんだった。
 クラスメイトからの視線もあり、俺たちは鞄を持って教室を出る。

「駅まで一緒に帰るとして……せっかくだからどこかに寄って行く?」
「いいのか?」
「特に予定もないからね」

 家に帰っても夕飯までゴロゴロして過ごすぐらい。
 平日にバイトの予定があるわけでもないしね。
 ただ寄り道するだけなのに、どこか嬉しそうな蓮を見て俺も嬉しくなる。

「行きたいところある?」
「んー、湊と行くならどこでもいいかな」

 相変わらず俺中心に考えようとするところは変わらない。

「何かやりたいことある? スポーツ以外で!」
「よっぽどスポーツ嫌いなんだな」
「学校の体育で動くから俺はそれで十分」

 運動部に入る選択肢がないほど俺はスポーツが好きじゃない。
 できるなら体育の授業すらなくなってもいいと思っている。

「じゃあ、ショッピングモールとか?」
「ゲームセンターもあるからいいかもね!」

 蓮の提案でショッピングモールに行くことにした。
 たしかバイト先の駅近くに大きめなショッピングモールがあったはず。
 俺たちはそこに向かって、電車に乗って行く。

「やっぱり髪の毛伸ばそうかな」
「せっかく切ったのに?」
「視線が痛い」

 電車の中でも蓮は注目を浴びていた。
 違う制服を着た他校の生徒もコソコソとこっちを見て話している。
 今まで特に気にはならなかったけど、実際にコソコソされながら見られると、精神的にくるものがある。

「気になるなら髪の毛を伸ばしてもいいかもね」
「いいの?」
「蓮が決めることだからね。だけど、俺はそっちの方が似合ってると思うけど」
「湊が気に入ってるならこのままでいい」

 似合っているとは言ったが、気に入っているとは言ってない。
 そんなことを思っていると、ショッピングモールの最寄り駅に着いた。

「ショッピングモールとか久々に行く」
「一組の友達とは遊びに行かないのか?」
「あいつら部活ばっかりだし、家が反対方向だからな」

 部活が休みなのもテスト期間中のみだ。
 一緒に勉強するために図書館に行くことはあっても、ショッピングモールには来たことがない。

「そうか」

 蓮は嬉しそうに先を歩いて行く。
 だが、途中で隣に俺がいないことに気づいて戻ってきた。
 そんなにショッピングモールに行けるのが楽しみなんだろう。
 それなら一番初めに行きたいと言えばよかったのにな。

「んー、先に本屋に寄ってもいい?」
「本屋か?」
「買ってた漫画の最新刊が発売されてたはずなんだよな」

 家でゴロゴロしていることが多ければ、自然と漫画を読んだり、ゲームをすることが多くなる。
 本屋に到着すると、すぐに漫画コーナーに移動した。

「えーっと……」

 平積みにされた漫画から目的の最新刊を手に取る。
 それと同時に蓮の手も横にあるサッカー漫画を手に取っていた。

「蓮って漫画読むのか?」
「これは買ってる」

 どうやら蓮も漫画を読むようだ。
 しかも――。

「それって全巻持ってたりする?」
「ああ、これを買えば29巻まではある」
「よし、貸してくれ!」

 中々土日のバイト代だけで、29巻も揃えられなかったからな。
 それに置く場所もあまりない。

「いいけど……」

 だが、蓮の反応はあまり良いように感じなかった。
 漫画を貸すだけの友達関係だと思っているのかもしれないな。

「別に漫画を貸してくれなくても友達だよ?」
「それは知ってる」

 どうやら俺の勘違いだったようだ。
 それなら他に理由があるはず。

「持ってくると湊が大変じゃないか?」
「言われてみたらそうだな」

 29巻を数冊ずつ持ってきても荷物になるだろう。
 弁当と飲み物、体操服などの荷物があれば漫画も邪魔になる。

「それなら蓮の家に――」
「遊びにきて」
「あっ……取りに行くつもりだったんだけど、いいのか?」

 俺の言葉に蓮は大きく頷いた。
 蓮が嫌じゃなければ、遊びに行ったほうが楽だからね。

「じゃあ、また今度お邪魔するよ」
「楽しみにしてる」

 そう言って、蓮は漫画を持ってレジに向かった。
 家に遊びに行くだけなのに、そんなに喜んでもらえるとは思いもしなかった。