優等生の鑑〜いつも笑顔の私を救ってくれたのは、誰よりも私のそばにいてくれた君だった〜

 少し暖かい風が吹いている。
 凜(りん)が来ないか待ちながら、スマホを見る。
 楽(らく)からのメッセージがきていた。

 『今日だよな?海行くの。気を付けろよ』

 優しいな、楽(らく)は。
 いつもそうだ。
 自分のことで精一杯のはずなのに。

 『うん。ありがとう』

 ハリネズミがにこにこしながら、「ありがとう」と言っているスタンプも送る。
 既読はすぐについた。
 指をグッドにしている犬のリアクションがついた。
「――お待たせ~、瑠愛(るあ)」
「凜(りん)!おはよー」
 編み込みのハーフアップをした凜(りん)が駆け寄ってくる。
「瑠愛(るあ)、可愛い〜!三つ編みだ!」
「ありがと。凜(りん)も可愛いよ」
 水色のワンピースが、よく似合っている。
 電車は空いていて、座ることができた。
 いつもはおしゃべりな凜(りん)も、電車の中では静かにスマホをいじっている。
 私は、スマホを見たり、本を読んだりすると酔ってしまうから、静かに揺られていた。
 目的地までは、意外とすぐに着いた。
 改札を出て、海に向かう。
 太陽に照らされ、キラキラと輝いている。
「わー!海だー!」
 凜(りん)は毎年、夏に海に行っているらしい。
「そうだね……」
 少し、気分が悪くなりながらも、凜(りん)のテンションに合わせる。
 みづき……。
「ね、早く行こ!綺麗だよ。写真撮りたい!」
 スキップしながら海に向かう凜(りん)の背中を見つめることしかできない。
 その場を、動けなかった。
 吐き気に襲われて、しゃがみ込む。
「…………なん、で……」
 その声に気付いたのか、凜(りん)が振り向く。
「ちょ、大丈夫……?瑠愛(るあ)」
「ごめん、ちょっとめまいが……」
 凜(りん)が駆け寄って来る。
 なんとか立ち上がる。
 でも、めまいと吐き気に襲われてしまう。
 ――やばい、倒れる……。

「――赤間(あかま)!」

 誰かに抱きとめられる。
 その声は……。
「……そ、空(そら)⁉」
 凜(りん)は、持っていたスマホを落とす。
 そう。
 空(そら)だった。
「大丈夫か?赤間(あかま)。……おい、赤間(あかま)?」
 空(そら)の声が、どこか遠くから聞こえてくるような気がした。