優等生の鑑〜いつも笑顔の私を救ってくれたのは、誰よりも私のそばにいてくれた君だった〜

 散る桜。
 見慣れた校舎。
 見慣れた生徒。
 見慣れた教師。
 名前の書かれた、クラス名簿。
 私はそこに、二つ名前を見つけた。
 一つ目は私、赤間(あかま) 瑠愛(るあ)
 もう一つは……。
「今年も一緒だな、よろしく、西壁(にしかべ)
 ――西壁(にしかべ) (らく)
 私の幼なじみ。
 人気者で、文武両道のモテ男子。
 私の友人である(りん)も、彼のことが好きらしい。
瑠愛(るあ)ー。クラス離れちゃったね」
「そうだね……」
 (らく)とは、中三でクラスが離れてから、全く話していない。
 ……疎遠ってやつだ。
 どう接したら良いのか、よく分からない。
「お昼は、絶対一緒に食べようね!約束だよ」
「うん、約束」
 教室に行くまでの間、私たちは、他愛もない話をした。
 もうすぐ、推しの作家の新作が出るとか。
 その人のサイン会に行くとか。
 妹が推しのライブに行ったとか。
 私は、その話に頷いているだけ。
 自分の話をするのは、好きじゃない。
 だから、これが楽だった。
「じゃあ、またね。瑠愛(るあ)
「うん。またねー」
 先に教室についた(りん)とは、ここでお別れ。
 一人で廊下を歩く。
 窓は開いていて、吹いてくる風が心地良い。
 教室の前に着く。
 深呼吸。
 これから一年、私はこの教室で、このクラスで過ごす。
 失敗は許されない。
 意を決して、扉を開ける。
瑠愛(るあ)!久しぶりー」
(もえ)。おはよー!」
 抱きついてきたのは、去年も同じクラスだった、立川(たちかわ) (もえ)
 友達かどうかと聞かれたら、よく分からない。
「おはよー、瑠愛(るあ)
瑠愛(るあ)と同じクラスで良かったー」
瑠愛(るあ)、また一緒にカフェ行こうね」
 去年同じクラスだった茉実(まみ)透華(とうか)、つぼみ達だ。
 クラスの一軍女子って感じの人。
 少し会話したり、愛想笑いで誤魔化したりしながら、自分の席へ向かう。
「お、(らく)ー。遅いぞ」
「ごめんごめん」
 廊下から、(らく)の声がした。
 私は“赤間(あかま)”で、(らく)は“西壁(にしかべ)”だから、席は遠い。
「はよー」
「お、(らく)。今日も一緒にゲームしようぜ」
「おう。いつする?」
 やっぱり、アイツは人気者だ。
 私と同じ。
 上手く本心を隠して、みんなの中心にいる。
 アイツは母子家庭で、色々我慢することが多かったから、普段でも我慢するようになった。
 ……私は、みんなからの期待に応えようとしすぎた。
 いつも明るくて、笑顔で、優しくて、賢い。
 そんな人間、いるはずないのに……。
 私は、そんな人間に、ずっとなろうとしている。