悪役令嬢に転生した干物女は酒の肴を食べたい。

「きみ、詰め所まで来てもらえるかな。なぜそんなにも顔を隠して歩いているのかな。何かやましいことでも……」
「え、ちょ、ぼくは怪しいものでは」
「怪しいですの! タイホですの!」

 この場で王子とバレるととてもとても大変なことになるから、私は名前は伏せて助ける。

「彼は仕事関係の知人です。私を驚かせようとしてその格好をしてみたそうです」
「この男が、クリティア様のお知り合い……」

 まだ怪しんでいる自警団のおじさんが、剣の柄から手を離さず、カインを横目で見やる。
 カインは赤べこみたいに激しく頭を上下させる。

「そ、そうなんだよ。クリティアの仕事場を見てみたくて。本当だよ」
「名前は?」

 カイン王子だなんて名乗れるはずもなく。偽名を考える余裕もなく、持っていたアフロかつらを見て口走った。

「……アフロン。ぼくの名前は…………ぼくの名前はアフロンです」

 これ以降、お忍びで市場に来るたびアフロンと呼ばれることになった。