「今日は煮豚を作ろうと思う」
「煮豚。かたまり肉を使うんですね」
デールはメモに余念がない。
豚ロースのかたまり肉、豚バラのかたまり肉。目算400グラムずつ。
フォークで全体に穴を開けて、太めの木綿糸で縛りあげる。凧糸なんてないから、専用に作ってもらった。塩をまんべんなくまぶす。
横で見ていたクックが震えだした。
「ちょ、お嬢様。なんで肉を滅多刺しして縛るんですかーー!? 傷口に塩まで」
「型崩れしないようによ。あと肉汁を閉じ込めるため」
「あ、ああ、よかった。そういうことでしたか。てっきり新しい趣味かと……」
悪役令嬢、SM嬢疑惑浮上。
そんな趣味はない。
「何言っているんだよクック。ローストビーフだって味が染みるように刺すだろう。覚えておけよ」
「はぁい、デールさん」
まだ見習いひよこのカラが取れないから、デールに小突かれている。
がんばれ若人。
フライパンでじっくり表面を焼いていく。
狐色の焦げ目がついたらトングで転がして側面と裏面も同じように焼いていく。
鍋に市場で買ってきた香味野菜たちを刻んでいれる。
ニンニク、ショウガ。
日本でよく見るネギは流石になかったから、香りがネギに似ている香草を入れる。
水と白ワインを注いで沸かし、焼いたかたまり肉を投入!
じっくり時間をかけて弱火で煮込んでいく。
いい匂いがしてきて、横で見守っていたデールのお腹がなった。



