悪役令嬢に転生した干物女は酒の肴を食べたい。

「かーーーー! うめえ! なんだこれは! こんな料理初めて食った!」

「あら、褒めてもらえて嬉しいわ。もう1本いかが?」

「2本……いや、あと5本もらおうか。家で待ってる嫁さんにも食わしてやりてえ」

 一人が買って美味いと言えば、さらに次の客も続々と数本一気にお買い上げ。

 ありがとうミーティア姉弟。

 頼んだわけでもないのにリアクションがテレフォンショッピングみたい。偉業がすごいよ!

「どうも、クリティア。露店でとっておきの料理を売ると聞いたんだが……」

 舞踏会の仮面に農夫の服装という、めちゃくちゃ怪しい組合わせの装いの男が現れた。

 声の感じからして、カイン王子だ。

 いいのか、王子がお忍びで焼き鳥食いにきて。

 王子だって人の子だし、たまにはジャンクなもの食べたいかもしれない。

 あえて普通の客として扱ってあげよう。

「どうも。何本にする?」
「これで買えるだけもらおう」

 ざっと100本分の札をドンと受け皿に乗せてきた。
 屋台の焼き鳥を大人買いする人初めて見た。

 金銭感覚の狂ったセレブって怖い。

「ちょっと待ったーーーー! それを買うのは僕だ。仮面の変態は下がっていたまえ!!!! クリティア。君の手料理を食べたい。アーンしておくれ!!」

 どこかで見たようなお花畑が、列に割り込んできた。

「クック、ジーニャ」
「承知しました」

 私が手を叩くと、使用人夫婦が連携プレイでお花畑を列からつまみ出した。

「留学先で何を学んできたのでしょう」
「俺、ああいう大人にはなりたくないなー」

 美形姉弟が綺麗な笑顔で辛辣な感想を言いながら、焼き鳥の追加注文をした。
 今日も平和だな。