悪役令嬢に転生した干物女は酒の肴を食べたい。

 領地視察の旅から帰ってきた母上が、机に並ぶレシピを一通り眺めてふとつぶやく。

「クリティアの料理はたしかにどれも美味しいけれど、揚げ物が多いように思うの。もっと、さっぱりしたものは作れないのですか?」

 最初の頃は『料理は使用人の仕事、貴族の娘は良家に嫁ぐのが仕事よ』と苦言を呈していた母上だけど、今では率先して試食してくれる。

 なんて物分りのいい母上でしょう。

 ジャージは「見た目がちょっと華やかさに欠けるというか……」と言葉尻を濁して着てくれないのが残念である。

「では、だし巻き玉子を作りましょう」

「だし巻き玉子?」

「オムレツみたいなものですが、ミルクは使わないです」

「それで美味しくなるの?」

「大丈夫です。見ていてください母上」

 醤油があればなお美味しい。

 だけど、もしこの世界にあるとしても入手困難な品物だ。

 そんな高い調味料使ったら、大衆向け本の意味がなくなる。

 一般的な家庭で手に入れられる材料だけで作れることが重要なのだ。